今週のお題「お父さん」
良寛さま
ある日、小学校からお知らせのプリントを持って帰ると、母は外出中で、父が早く帰宅していた。
父にプリントを見せると、どうやらその日に学校で子供向け図書の販売があるらしい。
随分と、急な知らせだ。
さっそく、父と二人で連れ立って小学校に行った。
数少ない図書の中から、父が二冊選んで買ってくれた。
その一冊が、「良寛さま」だった。
もう一冊は、どんな本だったか覚えていない。
小学生にとって、お坊様といえば頓智の「一休さん」。
良寛さまは、知らない人だ。
面白いお坊様なのであろうか?
表紙を見ると、良寛さまは随分とやせ細った老人で、なんだか見るのも恐ろしいような気がした。
でも、子供たちに囲まれているので、子供好きなのだろう。
本を読んでも、よく分からなかった。
アインシュタイン
小学生の時は、偉人の伝記を読むのがクラスでもかなりのブームになった。
偉人に学び、志を高くして、勉学に励もうという時代である。
私も、もっと伝記を読みたいといい、ある日、家族連れだってデパートの書籍売り場に行った。
デパートでは、子供向けの伝記が平積みになり、伝記の種類も豊富だった。
数ある伝記の中から父が選んでくれたのは、「アインシュタイン」であった。
アインシュタイン? 聞いたこともない人だ。
「この人、どんな人なの?」
「お父さんみたいな人だ」
「アインシュタインは、お父さんみたいな人なんだ」
素直な私は、アインシュタインに親しみを感じた。
一生懸命アインシュタインの伝記を読んだ。
本を読んでも、よく分からなかった。
今になって、あのときの父の気持ちが、少し分かる気がする。