楽しい雨の日
今週のお題「傘」
雨の日のお迎え
小学校低学年の頃、急に雨が降ると、母親たちが傘を持って迎えに来たものだ。
母と一緒に帰ると、うれしい雨の日だった。
美しい傘
それは、一目で私の心をとらえた。
ハンドルと中棒と石突きは木製で、茶色のニスがかけてある。
布地は、ベージュ地に朱赤で細かい草葉の模様がついている。 どこかのお店の包装紙を思わせるような柄である。
開閉は、ワンタッチではなく、手でゆっくりと行う。
そして、とても軽い。
母が、その美しい傘を買ってくれた。
実用一点張りの折り畳み傘ではない、初めてのお洒落な長傘である。
美しい傘は、雨の日の外出を楽しくする。
布を透けてくる光は、暖かい色で顔を照らしてくれる。
ある日、その傘を失くした。
地下鉄の中に置き忘れてしまった。
母が、地下鉄の会社に問い合わせてくれた。
どうやら、中央の忘れ物取扱所に届いているという。
母が、取りに行ってくれた。
美しい傘は、また、雨の日を楽しくしてくれた。
その後、似たような色柄のものを選ぶ度に、いつもあの美しい傘を思い出す。