世界地図は、世界観を表す
今日は、世界地図について書こう。
世界地図は世界中にあるが、世界は一つではないのと同様、世界地図も一通りではない。
世界の中心はどこにあるのか?
日本政府の発行する公式な地図では、日本(または太平洋)が中心になっている。
https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/worldmap.pdf
一方、欧州では欧州中心になっていて、なるほど日本は「極東」なのだとようやく理解するのである。
https://www.un.org/Depts/Cartographic/map/profile/world.pdf
欧州から見れば、日本は世界の東のはずれにある小さな島国にしか見えないが、日本人にとっては、世界の中心は日本に違いない。
領土範囲はどこか?
日本は敗戦を経験したため、国境問題には極めて敏感であり、また慎重でもある。
私は良くウィキで検索するとき、日本語・英語・仏語版を比べてみるのだが、「世界地図」で調べると、驚くことに日本語の記述が一番詳しい。
少し引用しよう。
- 中華民国(台湾)で発行された世界地図には、中国大陸及びモンゴル・尖閣諸島が自国領になっているものがある(中華人民共和国とモンゴル国が存在しない)。
- 日本で発行された世界地図では、南樺太、北千島、中国とインドの国境周辺、西サハラ、カシミール地方が所属未決定状態となっている。但し、南樺太の豊原(ロシア名:ユジノサハリンスク)には日本国総領事館があり、日系企業も進出している。北方領土、竹島、尖閣諸島は日本領となっている。台北には首都マークがあったりなかったりする。
- 中華人民共和国が発行している地図では北方領土は日本領、尖閣諸島・台湾は中国領となっており、北方領土については「ロシアが占領」と併記されている。また、南シナ海で中国が領土を造成して地政学的な目的から世界地図を変えてる行為は国際問題(南沙諸島海域における中華人民共和国の人工島建設)となっている[2]。
- ロシア、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどが発行している地図では南樺太・千島列島・北方領土は全てロシア領となっている。但しアメリカは、北方領土問題に関する日本の妥協を、恫喝によって阻止したとされている[3](詳細は「ジョン・フォスター・ダレス#国務長官」を参照)。
- 大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国が発行している地図では朝鮮半島が統一されており、韓国では北朝鮮、北朝鮮では韓国が存在しない。また、竹島が自国領となっている。
- アルゼンチンとイギリスの地図ではフォークランド諸島(マルビナス諸島)は自国領となっている(イギリスの実効支配であるため、世界的にはイギリス領となっているが日本の地図では、どちらの領土か明記せず所属未定となっていたり、未定扱いでは無いがどこの国の領土か明記していない場合がある)。
戦後77年、日本が一時米国の占領下にあったことを知らない世代の日本人も多い。
- 1968年に小笠原諸島が返還されて、今年で54年。
- また、今年5月15日で、沖縄返還50年となった。
- 北方領土については、いまだに解決の糸口さえ見えない。
現在、領土について世界共通の見解など存在しない。
これについては、仏語版のウィキにも記載されているように、世界地図は政治的に中立なものではなく、著者の視点が反映された政治的な意図を持ったプロパガンダの手段として用いられる可能性もあるのである。
Les planisphères ne représentent pas uniquement une surface physique mais sont souvent au centre d'enjeux géostratégiques. Ils représentent la vision de l'auteur et ne sont donc pas seulement issus d'une technique de représentation géométrique ; ils peuvent alimenter autant les intérêts de la représentation politique et peuvent être des moyens de propagande.
英語版のウィキには上記のような記載は全くない。
世界の拠点をどう表現するか?
世の中には、グローバル企業であることを一般に広く配信するために、ホームページで世界地図に拠点を示している企業は多い。
この時、二つの方法がある。
- 営業所や工場などの拠点をマークする方法
- 拠点のある国の領土全体に色付けをする方法
第1の方法は政治的に中立なので、どの国でも通用する。
一方、第2の方法は、どうであろうか?
自分の国が、たとえ意図的ではなくても、別の国として色付けされていたら、あまりいい気持ちはしないのではないだろうか?
そのような視点から、少なくとも外部への配信においては、現在では第1の方法が主流になっているようだ。
もしも、今でも第2の方法をとっている企業があるとしたら、自分たちはグローバルな感性がないとわざわざ宣伝しているようなものだろう。