日本語における鼻濁音の衰退
皆様は、日本語に鼻濁音というものがあるのをご存じだろうか?
そんなものは聞いたこともないという方が殆どであろう。
鼻濁音とは、簡単に言えば「がぎぐげご」を鼻に抜いて柔らかく発音することで、ウィキによれば、
鼻濁音(びだくおん)とは、日本語で濁音の子音(有声破裂音)を発音するとき鼻に音を抜くものを言う。音声上はま行子音 /m/ やな行子音 /n/ と同じ鼻音であり、ガ行子音/ɡ/における鼻濁音(ガ行鼻濁音)ならば、軟口蓋鼻音[ŋ]である。
東北方言などでは、タ行子音 /t/ などにもみられる現象である(入り渡り鼻音)ほか、特にガ行子音 /ɡ/ での鼻濁音使用が、日本語共通語の発音に関連してしばしば話題にされてきた。後述のように、共通語の有力な母体となった伝統的な東京方言が、厳格なガ行鼻濁音に関する法則を持つため、ガ行鼻濁音は日本語共通語の規範的・標準的な発音と見なされてきたことによる。しかし、現在の一般的な日本の小学校・中学校などにおける国語教育では、鼻濁音の指導は学習内容に含まれていない。
ガ行鼻濁音は東日本方言を中心に見られる要素であり、近畿方言から東の大半の伝統的方言にある一方、中国方言や九州方言(一部の島嶼部を除く)には全くない。ただし、東日本でも、埼玉県北部から群馬県・新潟県中越にかけての地域や、伊豆諸島、房総半島南部、愛知県などでは見られない[1]。
鼻濁音との出会い
東日本で育った私は生まれたときから自然に鼻濁音を使い、それが「標準語」だと信じていた。
初めて鼻濁音を意識するようになったのは、小学校の時、先生が
この頃の人が「が」を強調する(つまり、非鼻濁音 有声軟口蓋破裂音 [ɡ] で話す)のが気になる
とおっしゃったときだ。
マスメディアでの鼻濁音衰退
ウィキにもあるように、鼻濁音をきちんと使い分けることは、演劇・歌・アナウンスなど日本語のプロには必須であった。
しかし、西日本出身のタレントがメディアを席巻すると、鼻濁音は急速に衰退することになる。
松田聖子の歌では、「が」を強調した有声口蓋破裂音として発音し、それが新鮮に聞こえていたものだ。
YouTubeでは
YouTubeが広まるとともに、色々な日本語を聞く機会が増えた。
特別な日本語の訓練を受けない一般人が、世界に向けて広く発言できるようになった。
YouTuberで鼻濁音を使う人は殆どいない。 (数少ない例外はおわんこさん)
更には、妙に「がぎぐげご」の子音gを強調して話す人もいる。
その強調の仕方は、まるでドイツ語の様だ。
子音を強調することで、聞き取りやすくするという配慮もあるのだろうが、日本語でない別の言葉を聞いているような違和感がある。
江戸落語では
江戸落語では、一般に東京下町の言葉・江戸弁が使われる。
では、鼻濁音は使われているか、検証してみよう。
録音を聞くと、志ん生・志ん朝・円生・小さん・小三治・米丸・歌丸など往年の師匠方は皆、鼻濁音のお手本のような発音をしている。
私にとって彼らの話が快いのは、子供の頃に聴いた大人たちの話し方に似ているからかもしれない。
一方、最近の噺家さんたちを見ると、昇太・志の輔・米助・好楽など比較的若手の師匠方は、東京方言は使っていないようだ。
現在の笑点メンバーで鼻濁音らしい発音をしているのは、東京出身の木久扇師匠・六代目円楽師匠と大月出身の小遊三師匠ぐらいかもしれない。
(注・聞き直して、訂正しました)
皇室では
皇族の方々が使う日本語は、一般人の日本語とは違うので、簡単に比較はできない。
確実に言えるのは、昭和天皇・香淳皇后・上皇陛下は鼻濁音をお使いになる一方、上皇后陛下・常陸宮妃華子殿下・高円宮妃久子殿下はお使いにならない。
日本語を専門になさっている敬宮愛子内親王殿下も、鼻濁音をお使いにならない。
海外では
海外の日本人は、日本語の変化にさらされないため、昔ながらの日本語を保持していることが多い。
もう10年以上前になるが、ある人が、
鼻濁音が使えない人が多い。日本語が劣化している
と嘆いていた。
現代の日本語は、従来の東京弁ではなく、関西弁と外国語の影響を受けて、新しい日本語に変化した産物であろう。
私も、こうしてブログの片隅で、古い日本語を守りながら、古き良き昔の故郷のことばの衰退をぶつぶつと嘆くのであろう。