良い方向への社会的変化
今週のお題「2020年上半期」
コロナで大変だったこの半年、まだまだこれからどうなるかわからない。
ただし、良い方への変化もあった。
マスクが市民権を持つ社会
欧州では、マスクの習慣がない。
かつて、風邪をひいてマスクをしていると、変な目で見られた。
見られるだけでなく、いろいろと言われた。
「子供が怖がるから、やめろ」と、メトロの中で知らない男に言われた。
「お客様が怖がるから、やめろ」と、ドイツ人の同僚に言われた。
そのため、風邪がひどくても、感染が怖くても、マスクは人中ではできなかった。
今回、ようやくマスクが大っぴらにできるようになった。
幸い、アメリカのようなマスク反対運動は、フランスでは起きていない。
相手に触らずに挨拶できる社会
フランスでは、毎日一度だけ握手をして挨拶をするのが慣習である。
一度挨拶したら、その日はもう完了で、二度目に会っても挨拶してはいけない。
ちなみに、英国やドイツにはこういう習慣はなく、相手に触らずに挨拶してかまわない。 一口に欧州といっても色々で、まして「欧米」などとひとくくりにはできないのである。
会社に着くと、まず、同じオフィスにいる同僚を一人一人回って握手する。
親しい人の場合は、ビズをする。 女性の場合が多い。
おじさん同士がビズをしているのは見たことがない。(が、もしかしたらしている人もいるかもしれない)
昼に食堂に行くと、そこで会う上司や同僚に握手する。
食事の前に手を洗うのは当然だが、相手が手を洗ってくるとは限らないので、せっかくきれいになった手がまた汚れる。
私は、コロナ以前は、いつもアルコールを持って歩き、こっそりとアルコール消毒していた。
今は、相手に触らないで、いや、近寄らないで毎日の挨拶ができる。
自分で掃除できる社会
フランスは階層社会のためか、階層の上の人たちは、自分で掃除などすべきではないと思っているようである。
これは、街中を見ても、路上にゴミや犬の糞が散在しているので明白である。
また、職場の掃除は自分ですることはない。
職場のトイレの洗面台も、よく水浸しになっている。
私は、日本人のマナーとして、時々トイレの洗面台を拭いていると、変な目で見られた。
自分の机を拭くにも、雑巾やペーパーを自前で用意しなくてはならなかった。
コロナ以降、アルコールスプレーとペーパーが職場に完備された。
毎朝、まず机の周りを拭いて、気持ちよく一日が始められる。
日本人が普通に振舞える社会
日本では当たり前のことは、フランスでは当たり前ではない。
日本人らしく手を洗い、マスクをし、自分で掃除をし、握手やビズをしないで挨拶すると「フランス社会に溶け込んでいない変人」として扱われる。
そのため、日本人は結構無理をして、周りのフランス人に合わせているのだ。
自分では無理をしていないと思っても、やはりストレスはどこかに溜まっている。
コロナのお陰で、日本人が普通に振舞っても、少しだけ普通に見えるようになった。
そして、ストレスが少しだけ減った。
これは、素晴らしい社会の変化であろう。