ふぅみんと一緒♪

物見遊山と社会科見学

お父さんと一書♪

今週のお題「お父さん」

父は、私が子供の頃、休みの日にときどき書道を教えてくれた。
聞くところによると、若いころ、偉い書家の先生に師事して随分と鍛錬したのだそうだ。 

初めの一歩

書道において、何が一番大切か?

まずは、形から入る。
墨をする時は、硯に対して垂直に立てて、滑らかに。
筆は紙に対して垂直になるように持ち、肘をあげて腕が水平になるようにする。

次に、動きである。
紙に対して垂直に立てた筆を、そのままの姿勢で自由に動かすのである。
子供のころは、腕の筋肉やそれを操る神経が発達していないせいか、この姿勢を守って筆を動かすのは、とても難しい。

結果としてあまりきれいな形には書けなかったが、出来上がりは二の次なのであった。

 

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書初め

中学校の冬休みの宿題は書初め。
父も、張り切って教えてくれた。

床に毛布を敷き、紙を敷いて、大掛かりに始めるのである。

大きな硯で墨をする。

父の書いたお手本を見ながら書くのだが、思った通りには書けない。
それでも、地域の学校の書道展に出してもらったこともあるので、子供らしい元気な字だったのだろう。

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いらすとやさんより 「書初め」

王羲之の「蘭亭序」

それから数十年、良い先生が見つけ難いこともあって、書道にはご無沙汰していた。

ある日、パリの友人が書道教室に誘ってくれた。
中国人の先生が、有名な王羲之の蘭亭序」を教えてくれるのである。

嬉しいことに、この中国人の先生の教え方は、父と全く同じであった。
筆を垂直に、腕を水平に。
そして、時には手を取って一緒に字を書いて動きの感覚を教えてくれる。

クラスメートのフランス人たちは、皆大変に真剣で筆遣いも滑らかである。
中には、中国語を話せるフランス人もいる。

蘭亭序」の、一番初めの文字は「永」である。
「永」の字を書き始めた瞬間に、身体の中にある、忘れていた感覚が蘇った。

父親が教えてくれた、あの日のように。

筆を持てば、お父さんと一書♪