世間知らずの旅
今週のお題「外のことがわからない」
この世に生まれると、世界は自分を中心に回っている。
お腹が空けば泣き、おしめが濡れれば泣き、眠くなれば泣く。
当然のことながら
- 「お母さんが忙しいから、泣くのをやめておこう」
- 「お父さんが疲れているから、泣くのをやめておこう」
- 「ご近所迷惑だから、泣くのをやめておこう」
などという気遣いをすることは、全くない。
人は成長するにつれて、自分が自分であるという意識が芽生え、自分と、外の世界とは別のものだということがおぼろげながら分かってくる。 お父さんやお母さんや先生の言うことを聞いて、外の世界(社会・他人)に適応することも学ぶ。
それでも、自分と、外の世界がどれほど掛け離れているかは分かっていない。 ほかに基準とするものがないので、何となく自分を基準にして、世の中も自分と同じようなものだと思ってしまう。依然として、世界は自分を中心に回っている。
これが、世間知らずの世間知らずたる所以である。
多くの人がそうであるように、私も普通の環境で育った、と思っていた。
幼稚園で「社会生活」が始まると、 家の外には、自分の全く知らない世界が広がっていた。徐々に自分が世の中の基準ではないことを知るようになった。
- 世の中には、優しい子もいれば、乱暴な子もいる。
- 世の中には、正直な人も、そうでない人もいる。人を差別する人もいるし、意地悪をする人もいる。
- 世の中には、お金持ちも、お金に困っている人もいる。 働き者も、怠け者もいる。とても優秀な人も、そうでない人もいる。人の成功を羨む人もいる。
- 世の中には、自分と同じような人は稀である。
- 世の中には、いろいろと面白い芸術や学問がある。スポーツや娯楽もある。見聞を広め、知識を得ることは、外の世界を知るのに役立ちそうだ。
- 世の中には、都会もあれば、田舎もある。豊かな国も、貧しい国もある。自由や平和のない国もある。服装も違えば、文化も言葉も違う。
- 現代の日本に普通に生まれて育つことは、世にも稀なる幸運である。
そして、今、思う。
世の中には、随分と世間知らずの人が多い。 人数が多いので、社会の主流を形成して、その閉じた空間を「世間」と呼ぶ。 外の世界は自分たちを基準にして回っている。
井の中の蛙、大海を知らず
そして、今、旅をする。
私は未だに世間知らずである。
外のことがよく分からない。
世間知らずの浮遊塵、大海を彷徨う