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物見遊山と社会科見学

小松左京「日本沈没」1973年

2011年、東日本大震災があったとき、帰宅難民の風景は「日本沈没」の映画のようであったと、東京に住む友人が言っていた。

1973年、折りしも第一次石油ショックの年に発表され、一大ブームを巻き起こしたのが、「日本沈没」の小説と映画である。

先日、私は初めてこの有名な小説を見つけて読んでみることにした。

 

日本は海に囲まれ、長い間外敵から守られていたために、日本人にとって「日本」という国があるのは当たり前のことになっている。 しかし、日本が沈没してしまったら?

SFとしては、地球物理学者と深海探査員が主役になる珍しいケースで、プレート・テクトニクスという分野が紹介され、深海潜水艇やリニアモーターカー、LSIを使った大型コンピュータでの3Dシミュレーションなどの科学技術が駆使されている。

震災により物資が不足し配給制が導入されるところは、戦後の物不足やオイル・ショックを思い出させるが、近年の災害でも同様の社会現象が起こっている。  

日本政府は、海外の国に日本人を受け入れてもらえるように要請する。 諸外国の寛大な強力と、優秀な商社の準備もあって、7000万人が日本を脱出する。 日本を失い、世界中に散らばった日本人たちは、これからどうして生きていくのだろう。

 

発表から46年後の今読んでも、全く古さを感じないのは、「日本人が国を失って放浪民族になったらどうなるのか?」という哲学的な主題に、地球物理学の知識と科学的空想が加味され、災害に伴う社会現象の考察が含まれ、未来を語る「予言書」になっているからかもしれない。

 

「もっと早く読んでいたら」と思わせる名作であった。

今からでも遅くはない、ぜひ一読を!