映画「バースデー・ワンダーランド」(2019)
日本公開から3ヶ月遅れで、いよいよフランスでも公開。
日本語版を早速見に行きました。
原恵一監督の最新作「バースデー・ワンダーランド」は、「カリオストロの城」にも匹敵するロマンチックな冒険アニメです。
原作は、柏葉幸子の小説「地下室からの不思議な旅」。
アニメとはいえ大人むきで、フランス人の好みかもしれません。
ただし、今は夏のバカンス中で、パリの映画館は空いています。
フランスのポスターは、日本とはちょっと違う。
主役のアカネは、スマホでつながるクラスの人間関係に疲れた小学生。
お誕生日の前の日に、仮病で学校をお休みしていると、お母さんから頼まれて、自分の誕生日のプレゼントを受け取りに、親戚のお姉さんチイのお店にお使いに行きます。
ところが、お店にあった不思議な石の手形に手を置くとぴったり!
それは、アカネが「緑の風の女神」である証し。
アカネは、錬金術師・ヒポクラテスとその弟子・ピッポ、それに好奇心旺盛のチイに伴われ、この世界とつながっているもう一つの世界を救いに行くことになります。
もう一つの世界では、蒸気機関が発明されてからは科学の進歩は止まり、人々は自然の美しさを愛で、毎日の小さな幸せを感じて生活しています。
しかし、水をつかさどる王様が亡くなって以来、残された王子様は病気になり、雨が降らなくなり、花は色あせ、人々は水不足に苦しんでいます。
この世界を救うには、王子様が「しずく斬りの儀式」に成功しなくてはなりません。
しり込みするアカネに、ヒポクラテスが贈った「前のめりの錨」。
アカネは勇気を持ち、前進することしかできなくなります。
頼りにしていたヒポクラテスが旅の途中で消えてしまい、チイとアカネは未知の世界を自力で旅していきます。
クルマでの旅の様子、王子様を助けに行くという設定は、まさに「カリオストロの城」を髣髴させます。
クライマックスの「しずく斬りの儀式」のシーンは圧巻で、登場人物と一緒に観客にも涙のしずくが溢れてきます。
原監督のインタビューの一部。(パンフレットのフランス語を浮遊人が和訳)
「この映画のシナリオを書くとき、今の若い人たちのことをずいぶんと考えました。
若い人たちは、スマホとSNSの世界に閉じ込められています。
この環境が、世界とつながることを妨げています。
これは実に問題で、私個人としては、若い人たちにもう一度、自分自身の身体で感じ、ゆっくり考える時間を持ち、自分の周りを見回してもらいたいと心から望んでいます。」
「私は、ロマンチックな人間です。
月の光や、夕日の光のような、自然現象が大好きです。
そして、こうした自然の美しさに触れるとき、それがどのように生まれ、これからどのように保存していくかといった問いかけが生まれてきます。
私にとって、そして私の映画にとって、これが本質的な問いかけです。」
さて私たちも「前のめりの錨」を胸に、
スマホを捨て、
宝物を探しに世界へ一歩を踏み出しましょう。